脳髄日和
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『ライ麦畑でつかまえて』J・D・サリンジャー

もしも君が、本当にこの書評を聞きたいんならだな、まず、僕がどこで生まれたかとか、チャチな幼少時代はどんなだったのかとか、僕が生まれる前に両親はなにをやってたかとか、そういったデイビッド・コパフィールド式のくだらないことから聞きたがるかもしれないけどさ、実をいうと僕は、そんなこと語りたくないんだな。第一、そういったことは僕には退屈だし、第二に、僕の両親てのは、本について語ろうものなら、めいめいが二回くらいずつ脳溢血を起こしかねない人間なんだ。そんなことでは、すぐ頭にくるほうなんだな、特におやじのほうがさ。
それに、僕はなにも書評にかこつけて新潮だか文藝だかの受け売りを得意げにまくしたてていかに自分が文学に精通した博覧強記の希有な俊才であるかを喧伝しようだとか、そういうクリエーター的なインチキをやらかそうってわけじゃないんだ。むしろ僕はその手のトンマなうんこ野郎をみかけると、ああ、今すぐ空から隕石かなんかが降ってきてこいつの後ろどたまをかち割ってくれないかなあ、なんて思っちゃうタイプなんだよ、はっきりいって。もちろん、心の中でただそう思うだけでなにをするわけでもないし、思ったところで実際には降ってきやしないんだよ、まったくさ。それにさ、これは仮の話だけれど、万が一隕石が降ってきたとしても、頭を割られるのはトンマなうんこ君じゃなくて僕のほうなんだよな、どうせ。結局そういうふうになってる訳さ。
とにかく、僕が語ろうとしてるのは、つまり、J・Dのことなんだよ。J・Dってのは僕の兄貴ってわけだけどさ。奴さん、今はアメリカ東部のクソ田舎に隠遁しちゃってさ、もうなにやってるのかさっぱり謎なんだけど、この前ひさびさに名前を見かけたんだよ、新聞で。まったく驚いたね。なにしろ奴さんが裁判で勝利したって載ってるんだよ。裁判だぜ? あのJ・Dが。
でまあ、その記事を要約するとこういうわけさ。
なんでも『J・D・カリフォルニア』とかいう間抜けなペンネーム(つまり、J・Dの名前をもじったのさ。安易な奴だよ、まったく)のスウェーデン野郎がライ麦畑でつかまえての続編とか称した「60 Years Later: Coming Through the Rye」なる小説を出版しようとしたんだけどさ、この本が著作権侵害にあたるとかどうとかでJ・Dが怒っちゃってさ、で裁判になったわけ。それでまあ、よく知らないけど法廷でインチキな弁護士がお決まりのレトリック合戦でどうたらこうたら争ってさ、で、最終的に裁判官が、出版差し止めとする、あーむ、とかいった。
とまあ、そういうくだらない記事だったんだけどさ、とにかく僕はそれを読んで心底うんざりしちゃったわけだよ。なんでかって、もちろん裁判官だの弁護士だのそういう嘘くさい連中がうじゃうじゃ登場してるっていうのにもまったく吐き気がしてくるんだけど、僕がいいたいのはそうじゃなくて、つまり、J・Dのことさ。
その記事にJ・Dの短いコメントが載ってたんだけど、これがもう目も当てられないような下衆なやつでね。
「知的財産を被告に使わせるつもりはない」
まったく、うんざりしちゃうよな!
『財産』が聞いてあきれるよ。知的な財産なんてあるもんか。僕がなにより頭にくるのは、著作権だよ。あのいやったらしい法律さ。あんなもの作り出した奴なんてどうせ、本だのなんだのをお金に換算しようっていう低俗な銭ゲバ野郎に決まってるよ。おかげで箸にも棒にもかからない連中までもがあちこちで、これは俺のものであるだとか、あれはお前のものではないだとか、あほ臭い主張をやり合ってる始末さ。大体、なにかにつけて自分の権利をさも大層に持ち出すくそっ垂れってのは、たいていの場合、新潮だか文藝だかの受け売りを得意げにまくしたてていかに自分が文学に精通した博覧強記の希有な俊才であるかを喧伝したがるインチキなクリエーターみたいな野郎さ。まったく、やれやれだよな。
それでJ・Dなんだけどさ、僕がいいたいのは、まあ要するにこういうことさ。
つまりさ、結局のところ、J・Dはもうライ麦畑の崖から落っこちちゃったんだよ。
あるいは、四十何年だかの隠遁生活を送ってるうちにいつのまにか崖の下の人になっちゃったのさ。
「ライ麦畑で遊んでいる子どもたちが、気付かずに崖っぷちから落ちそうになったときに、捕まえてあげるような、そんな人間になりたい」が四十何年たって「知的財産を被告に使わせるつもりはない」だってさ、まったく。一丁上がりってわけだ。やれやれ、立派なもんだよ。おめでとう。
それでまあとにかくJ・ Dについてながながと君に語ってみたわけだけど、全部ひっくるめて、結局どう思ってるかってとこなんだけどさ、まあ実をいうと、自分でもわかんないんだよな。口に出したのを後悔してるんだ。僕にわかってることといえば、話に出てきた連中が今ここにいないのが寂しいということだけさ。たとえば、ストラドレーターやアックリーでさえ、そうなんだ。あのモーリスの奴でさえ、なつかしいような気がする。おかしなもんさ。誰にもなんにも語らないほうがいいぜ。語れば、話に出てきた連中が現に身近にいないのが、ものたりなくなってくるんだから。
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